世界有数のフェリー先進国の日本、その一翼を担うのがバルチラの技術力、すなわちエネルギー効率と地球環境性能の限界に挑戦するバルチラソリューションです。
およそ430もある日本の島々では、人々が住み日々の生活が営まれています。橋や海底トンネルで結ばれた島もありますが、フェリーが今もなお多くの島々を移動する最も効率的な手段であることに変わりはありません。「日本がこれまでフェリー業界に重点的に投資をしてきたことが、世界に誇る先進的で効率的なフェリーネットワークの構築につながりました」とバルチラマリン事業部の安武エリアセールスマネージャーは分析します。
「フェリーは人と車の両方を運びます。300 kmを超える長距離フェリー航路では、高級ホテルに匹敵する設備とおもてなしでお客様をお迎えします」
日本では2011年の地震と津波により沿岸部のインフラが大打撃を受けたことがきっかけで、海上輸送の利点に着目した研究調査が始まりました。加えてトラック運転手の確保の難しさのため陸上輸送の伸びが頭打ち状態になる一方で、環境問題に関する関心の高まりがフェリー輸送の増加に追い風となりました。
「環境への影響を減らすため、輸送手段の変更に対する積極的な動きが現れています。トラック輸送から海上輸送または鉄道輸送へのシフトによるCO2排出削減をいろいろな輸送機関が目論んでいます。トラック輸送の代わりに海上輸送を利用することで、CO2排出量は75%も削減されます」(安武)。
CO2排出削減に加えて、日本のフェリー船主および運航会社は、窒素酸化物(NOx) および硫黄酸化物(SOx) の排出に対する厳しい条件をクリアする必要性を認識しています。日本のフェリー船主は、安全運航、ライフタイム、高効率、スモークレス航行、さらにはランニングコストや投資コストの低減に加えて、環境に対する自らの責任も果たすことができる万能なソリューションを探し求めています。「それこそがバルチラに注目が集まる理由ではないでしょうか」というのが安武エリアセールスマネージャーの見方です。
「排出規制適合推進システムとして、バルチラは、Wärtsilä 31型エンジンおよびスクラバー、またはWärtsilä 31DF型デュアルフュエル(2元燃料)エンジンおよびLNG燃料システムLNGPacを開発し、オートメーションシステムを統合した高効率推進パッケージソリューションとして提供します。船舶のパワーマネージメントシステムの最適化についての提案も可能です。さらには安全運航体制を確立するよう個々のお客様のニーズに合わせたサービスアグリーメントをご提案することも可能です」(安武)
Wärtsiläは、環境コンプライアンスを満たす既存船舶のアップグレードに対していくつかのソリューションも提供しています。 たとえば、Wärtsilä HYソリューションは、ハイブリッドソリューションを既存のエンジンに統合し、最適な負荷でエンジンを運転、一方でバッテリーに余分なエネルギーを蓄電することも可能です。Energo ProFinプロペラキャップは既存の船舶の運航を最適化します。 そのフィンはプロペラとともに回転、エネルギー損失を減らし推進力を高めます。
Energo ProFinを使用すると年間平均2%の燃料節約を達成できます。Wärtsiläは、特定の国際規制を対象としたソリューションも提供しています。SOLAS条約(海上人命安全条約)には、商船の最低限の安全基準が記載されています。 Wärtsilä SOLASのアップグレードにより、要件が満たされ、船員の安全が確保されます。
さらに、Wärtsilä SOxスクラバーレトロフィットは、荷主にIMO 2020規制に準拠するための効率的で費用対効果の高い方法を提供します。
バルチラは、この度、日本の有力フェリー運航会社2社から新建造フェリー向けエンジンソリューションを受注しました。阪九フェリー(株)は、2隻の新建造フェリーに業界でもっとも効率的なエンジンおよび排ガスシステムを希望され、当社製品が選ばれました。2019年の初めには、新日本海フェリー(株)からも2隻の新建造フェリーのW31エンジンおよびスクラバーを受注しています。
新日本海フェリー(株)向けWärtsiläオープンループスクラバーシステムは、現状および今後のSOx排出規制値をすべて満足すると同時に柔軟性と信頼性も提供します。阪九フェリー(株)向けWärtsiläハイブリッドスクラーバシステムは、オープンループとクローズドループの両方式での運転可能な柔軟性が特徴で、クローズドループ運転の場合、瀬戸内海で洗浄排水を排出しません。両社のスクラバーとも排ガス中のSOx除去に海水を使用します。
「インライン型のI-SOxスクラバーは、コンパクトでありながら硫黄排出量0.5%以下という条件をクリアできます。またオープンループスクラバーシステムは省スペースでの設置が可能で、従来通りの居住スペースの確保が可能です」(安武)
バルチラのエンジンは日本のフェリー市場でも好評を博してきました。常にその決め手となるのが「効率の高さ」です。Wärtsilä 31型エンジンは、世界最高効率の4ストロークディーゼルエンジンとしてギネスブックに登録されました。デュアルフュエルおよび専焼の両バージョンでの運転も可能です。
「日本のフェリー運航会社にとって燃料効率は極めて重要な要素です。Wärtsilä 31を採用すれば、市場2番目と目されるエンジンと比較しても6%強の省エネルギーを達成できるでしょう」とバルチラのRasmus Teirプロダクトマネージャーは話します。
Wärtsilä 31の優れたエネルギー効率は、革新技術の組み合わせにより達成されました。
その基盤となる独自技術として、コモンレール燃料噴射システム、油圧駆動の吸排気弁システム、2段過給システム、そして統合型UNICエンジン制御システムなどがあります。高効率エンジンによって燃料コストが下がり、収益向上に寄与するのみならず、地球環境にも直接の効果が及びます。
「温室効果ガス排出量は燃費とリンクするもので、燃費が改善されれば排出量も減ります。さらにはWärtsilä 31に搭載の当社の特許技術であるツインニードル燃料噴射システムは、低負荷運航に特化した燃料噴射ノズルが特徴で、煤(すす)および微粒子の排出を抑えることも可能です。これらの独自技術によって、広範囲な負荷変動に対しても最適な排ガス性能が維持されます」(Teir)
「安全運航体制を確立するため、高効率化、寿命延長、メンテナンス計画の最適化が当社の希望でした」と新日本海フェリー(株) 清水寿男次長は話されました。
一方、阪九フェリー(株) 山口隆弘取締役からは、「今回のプロジェクトにおいては、最新技術を駆使した最高効率のエンジンと排ガス浄化システムを求めました。その要件を満たすものとしてWärtsilä 31は当然の選択であり、今回のハイブリッドスクラバーは、喫緊の課題となりつつある0.5%規制と密接に関連した環境的に持続可能なソリューションとなり得るでしょう」との評価をいただきました。
「効率の高さ」は、Wärtsilä 31のもっともアピール性のあるメリットの一つですが、このエンジンは日本のフェリー業界に対してそれ以外にも多くの恩恵をもたらすでしょう。信頼性が極めて高く、定期オーバホールの間隔を長くとることができ、また、騒音および振動も抑えられます。
「日本は数多くのフェリーを保有します。高効率の追求および排出削減という継続的なニーズがドライビングフォースとなって今後とも船舶更新という流れが途絶えることはありません。将来的には、LNG燃料推進のエンジンといった更なるクリーンなソリューションも登場するでしょう」(Tier)
フェリー業界の期待に応えるソリューションを提供し続けること、それが私達バルチラの願いです。